防音保護具の遮音特性と雑音下における会話了解度の関係
橋本 正浩他
本研究は、騒音環境下の会話聴取における第2種耳栓の装用効果について実験的に明らかにすることを目的とした。実験では、遮音特性の異なる3種類の保護具(1種耳栓、2種耳栓、耳覆い)を装用したときの日常会話文の了解度を10人の健聴成人により測定した。会話文は、3つのS/N比で変化させたピンクノイズレベルとともに、2つのレベルで呈示した。実験の結果、65dB で呈示した場合、1種耳栓や耳覆いと比較して、ノイズなしとS/N比+10dB条件のときに2種耳栓の装用効果が認められた。一方、85dB で呈示した場合、2種耳栓装用の効果は、すべてのS/N比で認められなかった。また、保護具の遮音値と了解度の差値について相関分析を行ったところ、65dB 呈示のノイズなしとS/N比+10dB 条件では、遮音値の低下にともなって了解度が改善する傾向が認められたが、他の聴取条件下では両者の有意な相関は認められなかった。本研究の結果は、騒音職場において耳栓2種を使用する場合、十分な配慮のもとに使用されるべきことを示唆する。このような遮音性能を抑えた保護具の装用は、騒音性難聴を引き起こす危険性を有しているだけでなく、耳栓1種や耳覆いと比較しても騒音下の会話聴取において大きな改善をもたらさないように思われる。